規制の無さと劣悪な環境が日本の漫画を面白くする

漫画のアイキャッチ

皆さんイカがお過ごしでしょうか?のぶです。

オタク経済圏という本が色々と興味深く面白かったです。
特に自分の好きなゲーム、漫画、アニメと言ったサブカルチャーが今世界に広がっているビジネスモデルが紹介されていて、非常に興味深かった。

これを元にのぶが日本の漫画の面白さの秘密を考察します。

スポンサーリンク

日本漫画の強さをアメコミの大御所が語る

この記事はアメコミの大御所、バットマンやスーパーマンを手掛けたチャック・ディクソン氏が「漫画がアメコミを打ちまかした理由」について分析している。記事。

ディクソン氏:

漫画は魅力的で、それぞれ違う作風で、人を惹きつける面白さがあり、バラエティに富んでいます。一方でアメコミは一部例外を除いて、多くの作品が十分に練られておらず、巧く作られていません。何にでもあからさまな政治思想が盛り込まれており、変化に富んでいないのです。

バットマン作者の「漫画がアメコミを完膚なきまでに叩きのめした理由」が正論すぎる・・ : ユルクヤル、外国人から見た世界
『バットマン』や『スーパーマン』など手掛けたアメコミ界の大御所作家、チャック・ディクソン氏が「漫画がアメコミを打ちまかした理由」について分析している。

なるほど、たしかにここに書かれているように、日本の漫画はバリエーションに飛んでいる。

そしてヒットする漫画は非常に洗練されている。
たまに粗削りで洗練されていないものも確かにあるが強烈な個性や非常に強いパワーを持っている。

強烈なパワーを持つ漫画

ベルセルクの1巻は絵は稚拙だけど、圧倒的な個性という暴力が大暴れしていた
忘れもしない初めて読んだ内容は伯爵の過去話だった。

戦争中に嫁さんが悪魔信仰にハマって集団セックスをしおり、それを見た伯爵は怒り狂って他の信者はぬっ殺したが、嫁さんは殺せなかった。その伯爵の様子を見て勝ったと微笑んだ嫁の顔を見て、ベベリットに願いを乞う話だった。

ドラえもんやパーマンの平和な世界を読んでた僕にとっては、トラウマ級の衝撃を受けたのを覚えている。

絵の稚拙さも最新刊を読んだあとだから思うことで、最初読んだときは全く気にならない、そのくらい読んだ時に強烈なインパクトがあった。

ただ、ベルセルクは特別としても世界に広がる漫画は日本では珍しくない。
古いところから言えば、セーラームーン、ドラゴンボール、最近では進撃の巨人や鬼滅の刃があげられる。

個人的には絵がなーと思い読むのをやめた本もあるが、世界的ヒットを飛ばしているのだから、やはり圧倒的なパワーがあるのだろう。

この辺りは育てた編集者がすごいと思う。

漫画のバラエティの広さ

漫画のバラエティ幅広さの話では、聖☆おにいさんが挙げられるだろう。
イエスとブッタが主人公という宗教をテーマにした作品がある。
ただ、これは日本の大本である神道が多神教だから受け入れられている作品だろうと思う、キリスト教やイスラム教は一神教のため、神と並び立つものが描かれるのは許されないだろう。

漫画のバラエティの広さは、文化の多様性があっての話だと思う。
他の文化を受け入れる懐の広さがあるからこそ、文化の多様性が生まれて、新しい漫画の息吹になるのだと思う。

ただ、この辺りを日本人は無意識に行っているので、文化の多様性について誤解している部分があるのではないかと思う。

劣悪な環境での漫画の生産

ある程度熟練したマンガ家で1 ページあたりの制作は14時間かかると言われている。毎週20ページのマンガ週刊誌で作品を担うということは週280時間、月4回で1120時間をかけて完成させるということになる。1日8時間、月20日の労働として、7人分の労働ということにな る。 ではそのマンガ誌で支払われる金額はといえば、原稿料は参考値で1ページ約5000円~1万円。多くても月で80万円ということになる。アシスタントを含めた7人分で割ると10万円程度が月給ということになってしまう。

アシスタントは1990年代半ばの時点で平均月給11万円、週90~140時間ほど働く(休日がない週でも1日12~20時間フルで働いている状態である)。この状態で6000人の「プロ」であるデビュ ーした連載作家を、2万5000人のデビューを目指す「アマ」のアシスタントが手伝い、あわせて3万人強によってマンガ業界は成り立っている。

オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件より引用

大変面白い娯楽の代表である漫画であるが、非常に劣悪な環境で作成されている
原稿料ではまともな生活が出来ず、単行本が売れることでようやく一息つける状態だ。

上記の引用では1ページ5千円~1万円の話だが、ジャンプで連載していた「BAKUMAN」
でも、新人9千円で連載時は1万2千円と話をしている。

BAKUMANの原稿料

ただ、皮肉なことにこの他国には真似できない労働環境と表現の自由が、どの国にも負けない競争力を生み出しいてる

日本の漫画強いのはイノベーションが生まれるから

劣悪な環境にあるからこそ、人気を得るために必死に考えてものを作り上げていく、そして漫画は規制がなく面白ければ多くの人に認められる。

男性、女性、宗教、肌の色など関係ない、面白いかそうでないかで決まる。
漫画家が生み出したものが多くの競争に晒されて市場に出ていく。

日本はアメリカコミック市場と比較すると5倍ほどある、単純に考えると競争率は5倍だ。
実際には出版社に持ち込み、人気週刊誌などになると想像を絶する競争となるだろう。

その中で個人の才能を武器に戦っていくのだから、ヒットした作品が面白くないわけがない。(好みはあるよw)

アメコミ作者のディクソン氏の分析はごく一部でしかないことがわかる、それはそうだろういくら漫画が好きだからと言って自分の生活まで犠牲に出来るだろうか?

新たなヒットの源泉「なろう漫画」

「小説家になろう」のコミカライズが最近激しい。週刊マガジンになろう原作の漫画「シャングリラフロンティア」が載ってるのを最近知ってビビった。

なろうのコミカライズが盛んなのは、ある程度品質が保証されて、PVという数値から売上が見込め点だろう。

このようなことが起こっているのは、ネット投稿サイトの投稿数が非常に多く、読んでいるユーザーも多いためだろう。
もちろん投稿されている作品は読むのもつらい未完成もあるが、人気を得ているものは出版社を通した作品とはまた違った本物の面白さを持っている物もある

たぶん「蜘蛛ですがなにか?」は出版社持ち込みでは落ちてたと思うよ。蜘蛛が主人公は面白くても人気でないと普通は思われる。

原作がある作品は漫画家からすると、1から作るのとは別の難しさがあるらしいが、売上が見込めるのは漫画家さんも嬉しい話だろう。
ファンは喜び、原作者も嬉しい、漫画家も嬉しい、出版社も嬉しい、みんながハッピーになれる話だ。

まー実際は色々な契約があるからね、鬼滅の刃の映画版はヒットしても、一部しか原作者にお金は渡らないらしい。

アメリカと日本で違う著作者人格権

お金の話は分からないが、著作権では映画版に作者や出版社の©マークは本来必要ないらしい。
「作品のオーナは映画の著作物の製作に発意と責任を有するものにある」となるので、映画はプロデューサーの著作物になる

ただ、慣習的なのか、ほぼどの作品でも作者や出版社の名前が載っている。日本では著作者を尊重している。

しかし、アメリカでは著作者人格権の意識が低く、はっきりいれば守られていないので、ドラゴンボールレボリューションのようなまったく違う作品が出来上がるのだ。

話がずれたが、なろうのようなネット投稿サイトが増えることは、漫画の広がりを意味する。
もっともっと広がって面白い作品が出来るとうれしいことである。

アメコミの衰退を招いたコミックス倫理規定委員会の検閲

日本漫画の強さを述べてきたが、アメリカの漫画、アメコミが衰退した理由を簡単にだが書いておく。

直接的なアメコミ衰退の原因は、表現の自由が実質的に規制されたことになる。

米国では1950年代にマンガ表現をめぐって上院議会でコミックの残酷描写をめぐる論争があり、出版業界が自主的にコミックス倫理規定委員会を設立し事実上の検閲を行った

この事実上の検閲がかなり激しく、子供にいい影響を及ぼしそうな勧善懲悪のヒーローコミックを持ってた大手の出版社は残り、悪い影響を及ぼすホラーコミックは、出版停止に追い込まれて弱小出版社は倒産していった

これにより表現の幅が狭くなりコミックの多様性が失われていったのだ。

20世紀娯楽の王様テレビの出現

アメリカでは1945年は8局しかなかったテレビは、1960年には515局とテレビ局が激増

アメリカはコミックの多様性がなくなったが、テレビは逆に幅広いチャンネルで様々な番組を放送していった、また漫画よりもスポンサーが付きやすかった。

アメコミにはスポーツ漫画が非常に少ない、それはテレビでスポーツを放送したほうがリアリティがりと迫力などで負けてしまうからだろう。

逆に予算がかかる冒険者や特撮ヒーローものは、アメコミが開拓していく。それでアメコミは生き残りをかけるわけだ。

このようなことが起こると若者も漫画を描くより、テレビ業界や当時人気のあったディズニーにあこがれてる。

アメコミは一部を除いて衰退していった。実際、アメコミの代表であるマーベルヒーローズは倒産して最終的にウォルトディズニー社に買収されている

細かな理由は色々あっただろうが、表現の自由が規制されて出版社が倒産、その状況に娯楽のライバルとなるテレビ局が激増がアメコミ衰退の原因となるだろう。

日本の漫画は表現の自由の大事さをアメコミから学ぶべきだと思う。

とは言え、コミックス倫理規定委員会は現在解散されている。

映画にもなったヒストリー・オブ・バイオレンスも原作は漫画らしい。
とは言え今までの慣習からか、日本の漫画は一般少年誌でもエロイ、ロリコンだ!と騒がれる後遺症が残っている。困ったもんである。

まとめ

日本は作品に規制がなく、誰もがネット小説で発表できてオープンな評価される場所が提供されている。
小説発表され、それを漫画、アニメにすることが一般的になった。

アメリカは自分で手足を縛ってしまった結果、コミック市場は競争力を失った。

中国は、単独で10億人の市場規模を誇るので将来はわからないが、中国共産党の一党独裁体制がある限りは、表現の自由はないに等しい、日本のような多様な作品は生まれにくいだろう。

つまり、日本の漫画作品の最大の敵は「ポリティカル・コレクトネス」、ポリコレではないだろうか?

この自主規制ともいえる過剰な規制は、アメコミのように漫画産業を衰退させる。
面白い漫画を残していくためにも、表現の自由は守っていくべきだろう。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました